200年住宅 HABITA | MISAWA international
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スタート・ハウス

未来に向けてのメッセージ
東日本大震災では甚大な人命と家屋の被害があった。世界に向けて日本人はまた新しい復興への手本を示さねばならない。今回の被害の多くは津波によるものであり、地震とは違い住宅そのものへの対策は難しい。しかしエネルギーの問題も含めて住宅のあり方を問う機会でもある。その意味では本来の住宅のあり方を見つめ直しながら、住宅の一つの様式として日本民家の復興を目指したい。大震災の復興住宅は東日本だけではなく、未来の日本に向けてのメッセージとして残してゆくことでもある。
がんばろう、日本。復興住宅へのビジョン
復興住宅として考案する家は、未来への夢や希望を盛り込んだ家であり、新しい時代の日本の家の様式を生み出そうとする家。将来の増築容易性を含め、住むための空間として8+6畳とした。
また2階への増築は屋根の撤去・増設工事を含めて手間がかかるので、予め総2階とし、これに玄関・階段・水周りの設備フレームを含めて19坪をスタートハウスと位置づけた。たとえ今は小さくても、将来への希望は復興しようとする人の心に生きる意欲を与えてくれる。

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200年住宅のデザイン基準
住宅のデザインは、流行や人気だけで測ることはできない。同じように短命的なデザインの流行や人気が住宅の価値に影響を及ぼすことも考えにくい。むしろ、住宅のデザインを評価するためには長期のスパンから見てデザイン基準を定めておく方が良い。しかし数十年でも難しい未来への変化の予測は、数百年となるとなおさらである。反面、デザインの原点は歴史や文化に根ざしたところにあり、数千年の時を経ても変わらない部分をもっている。デザインは時を経ても価値が下がるものではないのである。たとえば日本の民家は、日本の気候や風習、そして日本人の気質を具体的な住宅の形として表現しているものである。つまり陳腐化しないことが住宅のデザインのポイントである。そのポイントとは、より変化が少なく、その上より変化に対応できるものでもある。そして、長く持たせるべき構造躯体にこそ、デザインフレームとしての基準が必要である。


1.CLASSIC design

2.SKELTON design

3.FRACTAL design

1.CLASSIC design
古くから残っているデザインには良いものがたくさんある。むしろ残したくなるデザインであったからこそ、壊されないできたと言える。クラシックと言えば、こうして残された古典的なものに与えられる言葉に思えるが、実は違う。芸術などで使われる「CLASSIC」の意味は、最高級、第一級で模範的なものであることを指している。新しく作られたものに対して贈られる言葉としては、まさに最上級の賛辞である。新しいデザインでありながら、将来の古典として残ってゆく予感を感じさせるという意味も込められている。200年住宅は時代と場所を越え、時空を超えて評価される「CLASSIC」デザインを極めなければならない。


2.SKELTON design

構造体を技術案件として捉えることは、住宅デザインの間違いを招きかねない。現代技術をもってすれば、たいがいの事は可能になる。しかし、デザインにおいてはやればできるが、やってはいけない事がある。第一にデザインが先んじて、構造体に無理をかけることがあってはならない。むしろ、住宅デザインの始まりは構造体のデザインにある。つまり、構造体は何よりもデザイン案件なのである。隠す、覆う、仕上げる、繕うのではなく、先に構造体を現し、美しくデザインすることから始めなければならない。数々の古民家はまさにその手本である。200年住宅のデザイン基準に、「SKELTON」デザインを欠かすことはできない。


3.FRACTAL design

自然の中には、見習うべきデザイン要素が多く隠されている。自然のデザインは画一的ではなく、それでいて一定の法則の中にある。この自然界の大きな法則が、「FRACTAL」である。いちばん身近な存在でいえば樹木である。たとえば木目は厳密には同じものは1本もない。立ち木には枝があり、木材には無作為に節があるものである。反面、樹種によってそれぞれの統一感がある。杉には杉のコンセプトがある。これらの木材を使いデザインする時、樹種を揃えるのも作為であれば、無節を揃えるのも作為である。そして、後者になるほどより人為的に感じる。人為的に作り過ぎないように、それでいて自然の法則を感じさせる微妙な「FRACTAL」デザインを、200年住宅では汲み取らなければならない。

デザイン基準の概要と評価ポイント

評価項目

 

詳細

概要

躯体評価

柱直下率

主柱

間面の区画に使用される五寸角の柱を「主柱」と位置づけ、この直下率を躯体の評価とする。主柱はまさに躯体にかかる力を伝えるもっとも大切な構造体である。意匠を優先して主柱を移動させることは、スケルトンデザインのコンセプトに反する。直下率の低下は、そのままデザインの低下として評価される。

管柱

管柱の主目的を、耐力壁対応の柱とする。したがって主柱と組み合わされて設置されることが多い。この場合の直下率は必然的に高くなるほど評価は高い。また、従目的として開口部脇に使われることも多い。窓の配置という面で、管柱の直下率はデザインへの関連性が高く、デザインの評価基準となる。

意匠柱

構造上は必要とされないが、デザイン上配置される五寸角の柱が配置されることがある。安易な配置は、デザイン上の整合性を失うことが多い。構造体に組み込まれる意匠柱として五寸角を配置するときは、大梁下にするのが基本。これに外れた意匠柱はデザイン性を失う可能性が高い。

梁伏せ

大梁

梁の両端が、柱に掛かるものが大梁である。特に主柱に掛かる大梁がきれいに配置されていると、忠実な間面のデザインとなる。大梁伏図として検証したときに、大梁の納まりに整合性があれば、力学的にも美しい力の流れになる。

小梁

梁~梁間に掛かる梁が小梁である。天井の構造材を現しにできるデザインには小梁の上手な配置が欠かせない。梁~柱間に掛かる中途半端な小梁が、デザインされていない設計の住宅では散見される。ましてや大梁と小梁の区分が乱れたものは隠すしか手立てはない。

雑梁

間崩れの壁などを主要構造材と同じ扱いにすると、梁伏せに雑多な小梁がかけられることになる。これらの壁は構造体ではなく、羽柄としての間柱で構成すべきものである。雑梁の多い設計は、デザイン上も悪いばかりか、長期住宅のコンセプトにも合致しない。

躯体天井高

1

1階天井には、きれいな構造体の設計と大きな空間確保が大切である。空間確保は、当然断面的にも要求される。躯体天井高、つまり構造体の水平構面上端から梁下端までの寸法を、より高く空間的に確保しておく方が望ましい。

2

2階の躯体天井高は、水平構面上端から小屋組みを含み母屋梁下端もしくは、登梁下端の平均値とする。これらの空間確保がしっかりできていることは、現在だけではなく将来へのデザインの可能性を広げることになる。

耐力壁

壁線乖離

耐力壁が配置されるべき場所は、法的規制にはないが本来大梁下が理想である。また、せめて大梁と連結した形で配置されるべきものである。大梁の壁線から乖離している耐力壁は、躯体デザインとしては減ぜられる点となる。

偏心率

きれいな間面の構造は、柱梁のバランスとしては偏心が防げる構造体である。さらに、耐力壁の強度・バランスの配置を工夫することで、偏心率の低減された躯体デザインがなされるべきである。

モデュール

間崩れ

モデュールを遵守することは、不用意なデザイン性の低下を招きにくくする。モデュールから外れ間崩れが発生すると、柱の配置に問題は見えなくても、小梁の配置でリズムを崩し、部分的にも隠すことが必要となる。さらに部材の不効率も発生し、高コストの設計に通じる。当然ながらデザインとしては減ぜられる点となる。

部材

現し

現しをデザインとするためには、相応の準備を怠ってはならない。逆にクロスなどで仕上げるのは、いつの対応でもできることである。この点だけでも、現しのデザインを施すことがデザイン上の上位にあることは理解できる。インテリア・エクステリアに構造材現しにしてあることだけで、デザインの価値を評価できる。

金物

木材仕口の納まりは、古来の木組みがもっとも美しい。しかし、残念ながら現行法上は、補助金物が必要とされている。現しのデザインを基本とするには、仕口に使われている金物のデザインも吟味されているものでなければならない。補助金物よりも、構造用金物。その中でも、デザイン性の高いものに評価を与える。


屋根評価

形状

勾配屋根

雨の多い日本の風土の中で、勾配のついた屋根が基本であることは否定できないことである。さらにこれらの屋根の中でも、切妻・寄棟・入母屋・片流れの基本的な形状は、変わらないクラシックなデザインであると考え、評価が高くなる。

陸屋根

技術の進歩により、防水性・施工性が高まったことでやればできるデザインになってきた。モダンといえば聞こえは良いが、反面、どのデザイナーにもまとめられる安直なデザインでもある。陸屋根は敢えて、デザインを放棄したものとして判断する。

勾配

急勾配

日本の気候は温暖よりも、多雨を旨とすべきである。勾配の急な屋根ほど水はけが良いのは自明のことである。草葺、瓦葺、スレート葺と少しずつ勾配は緩くなりつつある。瓦葺の基準である、4寸勾配を、急勾配の基準として高く評価をしたい。

緩勾配

プレカット材の加工から判断しても、3寸勾配よりも緩くなると機械での加工はできなくなる。当然、精度の安定にもつながる無理のあるデザインと考えざるを得ない。デザインは決められて難しく思われるところに、工夫を凝らして新しく感じさせるものにある。

棟の数

屋根形状の複雑さを測るポイントの一つに、連続していない棟の数で判断することができる。多くの古建築は一つしかない。ましてや多段の棟違いなどが標準化することもない。できれば棟は、一つないし二つにとどめておくべきである。

谷棟

棟が交差することによって、必然的に谷棟が発生する。これを避けるには、片流れの屋根を採用するか、下屋の納まりを利用するしかない。曲屋などでは散見されるが、茅葺で細い繊維を厚く重ねるからこそできるが、弱点であることに変わりはない。

軒の出

日本建築の美しさの要素に、長い軒の出があることは疑いがない。逆に現代住宅のデザインの貧相さはこの点にあるともいえる。建物の耐久性や、エネルギーの効率を考えても軒の出が長いことはすげれていることである。

軒先の数

複雑な屋根形状では、短い軒先・ケラバを駆使しないと屋根が掛からないことがある。3尺以下の軒先ケラバを極力避けて設計することは、安定感と力のある屋根デザインを実現することになる。

空間評価

居住空間

広さ

居住空間としての役割を担い、さらに将来の可変性にも対応しうるためには、延べ面積の確保もデザイン上大切な要素となる。単純な面積の判断ではあるが、一定の基準を設けるべきである。

高さ

空間そのものの豊かさは、広さ以上に高さによって感じられることが多い。しかし長期耐用を考慮に入れると、単に天井の高さで判断するのではなく、構造躯体に確保された空間高さで判断する。

可変空間

大空間

200年という期間では、社会制度も生活様式も居住環境も変わることを前提にしなければならない。細やかな部屋割りは今現在の利便性を求めただけで、長い期間の変化を受容できない。基本的にはできるかぎりの大空間を設計の基本として、構造材ではない間仕切りで対応することが、空間デザインの基本である。

吹抜け

民家を訪れて感心するのは、柱の太さと小屋組みの見える吹抜けである。集合住宅の部屋のような白く四角い空間ではなく、吹き抜けがあることが、戸建住宅の大きな魅力となる。また、可変空間としての機能もあり、プラスポイントとして評価する。

プラス空間

出居

直訳的な「アウトリビング」から、客間の意に変転してきた空間としての出居。もてなしの心、大切にする物、そのための空間を家の中に取り込むことは、ハード以上にソフトである暮らしのデザインを進めることに他ならない。

小屋裏

勾配のある屋根には、使用に耐えられるだけの小屋裏空間が取れる。居室としての使用価値は、矩形に勝るものではないが、小屋裏の勾配天井が見える異形の空間は、むしろ独創性を育てる空間になる。この豊かさがデザインの評価を高めることになる。

開口部

配置

小壁

開口部は壁面に取り付くだけに、袖壁、腰壁、垂壁など様々な小壁と取り合う可能性が高い。しかし、窓を取り付けるために作られる小壁は自然であるとはいえない。不揃いで且つ不作為な小壁の形成は、デザイン性を失う要素となる。

連続性

外観から見た時、窓のデザインは単体よりも上下階や水平の連続性を勘案して評価される。窓の上端・下端の延長ラインが多くなることで水平の連続性が失われ、同じように上下階の窓の端部がずれることで垂直ラインが煩雑になる。揃えるのがデザインである。

安全性

転落防止対策

建築主の意思とは通じない、隔世もしくは別の家族が住まうことが前提となるために、特に危険な部位を作ることがあってはならない。人の生活が優先されるデザインが求められるのである。特に階段や手摺などの転落に関する安全性には、高齢者だけでなく子どものへの安全性の配慮も必要である。

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