003)集成材
集成材のメリット
集成材とは
ラミナーを繊維方向を平行にして重ね、貼り合せて一つにした建材のことです。
ラミナーを十分に乾燥(含水率を一旦10%以下に)させてから製造されるため、製品の出荷時には含水率が製材に比べて低く、かつ均一であります。 そのため、ムク材よりも明らかに寸法の変化が少ないのです。
※ラミナー=節や割れなどを取り除き、厚さ2~3cmほどに製材された板
・天然木に対し1.5倍以上の強度性能を実現
・鉄・コンクリートより強く、建物の軽量化が可能
・断面の大きい集成材は、防火性能が高い
・断熱性に優れ、調湿能力は抜群
・耳や目にやわらかな素材
・半永久的な耐久性を実現
・自由な形状や寸法の部材が可能
完璧な木材なら・・・集成材より強い。
しかし、実際のところ、木材は工業製品ではないため、中には節・曲がり・割れ・狂い・あて・変色・腐れなどが起こりえます。
集成材は・・・建築構造材として強度が一定
強度UP→節があっても欠点を分散
RCよりも古い、集成材の歴史
集成材はムク材の約1.5倍の強度を持つ?
上記表より、ムク材の曲げ強度を1としますが、実際、ムク材には節や割れなどのムラがあるため、表記の80%=0.8として、計算します。
木材(ムク材)の欠点でもある大節、割れ→強度に影響
※ムク材の場合、材中にあって外観からは予期できないものもありえます。
集成材は、それらの欠点を除いて、積層しているため、品質の均一化 強度性能の向上がされており、そのままの1.3で比較すると、「集成材は、ムク材の約1.5倍の強度」
集成材は接着前に木材の欠点(例えば、大節・死節・割れ・腐れ 等)を除去するため、強度の数値管理が行いやすく、
さらにその木材の強い部分を集めて製造する事が出来るので、平均的に強度の高いものを製造する事が可能なのです。
しかしムク材は計算上の安全性をみて低減率を掛けますが、そのバラツキは木目の詰った良材も含みます。時には、1.5倍以上の強度もあります。
木は乾くと強くなる
木材の強さは、含水率によって変化します
繊維飽和点(含水率30%)を境に、乾燥するほど強くなります。
※全乾燥重量とは、乾燥を続けても、重量が変化しない水分ゼロの状態のことです。
乾燥が不充分な木(グリーン材)
寸法変化、強度低下、反り、割れが生じやすくなってしまう。
そのため、HABITAでは集成材に用いる木材は天然乾燥と乾燥装置により、細胞膜中の水分まで放出。
→含水率を一旦10%以下にし、強度アップを図っています。
未乾燥材 | 乾燥材 | |
---|---|---|
寸法 | 乾燥させることにより寸法が小さくなる | 一定である |
割れ | 乾燥度合いによって、割れや反りが発生する | ほぼ起こらない |
強度 | 保管、乾燥状態によって含水率は異なり、強度も異なる | 構造用集成材なら、含水率15%以下 |
耐久性 | 乾燥している木材を吟味して使うことが大事 | 長い |
集成材ができるまで
木材の強さは、含水率によって変化します
十分に育った人工林から木を切り出し、資源循環の為再造林します。
製材工場で挽き板(ラミナー)に加工します。
狂い割れの原因である含水率を、人工乾燥技術などにより、JASの基準値の15%以下に下げます。
機械と目視でラミナーを強度別に分け、欠点除去後、適材適所に使用します。
ラミナーをギザギザに加工し接着剤で継ぎ、長さを調節します。
ばらつきのあるラミナーの厚さを均一にするため機械で表面を削ります。
接着剤が塗布され、プレスされます。接着が完了した集成材はお湯で煮てもはがれることはありません。
プレスされた後に抜け節、カケなどの欠点をパテ埋めします。その後、一晩養生をし、接着の強度を強めます。
決められた長さ、厚み、幅に仕上げます。その後、JAS基準で定められた接着試験、強度試験を行っています。
出来上がった製品を出荷し、建設現場や市場に届けられます。
集成材の種類と基準の概要
規格 | 集成材 | 構造用集成材 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
造作用集成材 | 化粧張り造作用集成材 | 化粧張り構造用集成材 | 小断面集成材 | 中断面集成材 | 大断面集成材 | |
用途 | 主に内部造作 | 主に在来工法住宅柱材 | 構造耐力用部材 | |||
使用環境条件 | 住宅内部 | 建築物の内外部:温湿度環境・風雨・火災の可能性によって2条件に区分 | ||||
寸法 | --- | 短辺7.5㎝未満、長辺15㎝未満 | 短辺7.5㎝以上、長辺15㎝以上で大断面以外 | 短辺15㎝以上、断面積300c㎡以上 | ||
寸法精度 | 仕上げ材:+1.0~-0.5未仕上材:+3.0~0㎜ | +1.0~-0.5㎜ | +1.0~-0.5㎜ | 短辺:+1.5~-0.5㎜、長辺:300㎜以下+1.5~-0.5㎜、材長:3,000㎜超±0.5%(ただし+5.0㎜~-3.0㎜未満) | 短辺:±1.5㎜、長辺:±1.5%(ただし±5%未満) | |
ラミナ厚さ | 等厚、5㎝以下 | |||||
ラミナ配置など | --- | 対称構成 | 対称/非対称、異等級/同一等級 | |||
ラミナ積層数 | --- | 5枚以上 | 異等級:4枚以上、同一等級:2枚以上 | |||
ラミナの品質 | 目視 | 目視および機械等級 | ||||
集成材等級 | 1・2等級 | 1等級 | ラミナの樹種・配置・強度性能に応じた多くの等級 | |||
接着試験 | 浸漬剥離 | 化粧薄板:浸漬剥離ラミナ:構造用と同じ | 浸漬剥離・煮沸剥・減圧加圧・ブロックせん断 | |||
化粧薄板 | --- | 表面割れ抵抗性、厚さ制限あり | --- | |||
曲げ性能 | --- | 集成材の曲げ破壊試験 | 集成材の曲げ破壊試験、ラミナの曲げ剛性試験、ラミナの曲げまたは引張り試験 | |||
含水率試験 | 平均15%以下 | |||||
ホルムアルデヒド放散量 | 表示なし、F☆☆~F☆☆☆☆☆の4段階 |
木は鉄よりも強い?
「木材・鋼・鉄・ABS樹脂・コンクリート」の物質の強度を、重さの基準となる「比重」で割った値=比強度で、比較すると、
比強度=材料の強度を単位体積当たりの重量で割った値です。つまり、引張り強さを比重(密度)で割った値が比強度です。
比強度が大きいほど、強くて軽い材料ということになります。
同じ太さ大きさ(断面積)で比べると、木と鉄では、もちろん鉄のほうが強いのです。しかし、重さを同じにしている比強度で比べると、他の材料よりずっと強いと言えます。
木材と
引張 | 圧縮 | 曲げ | |
---|---|---|---|
鉄 | 約5倍 | 約2倍 | 約15倍 |
コンクリート | 約225倍 | 約9.5倍 | 約400倍 |
木は軽いから地震に有利
地震の際に、建物が受ける力として地震力というものがあります。それは水平方向の力で、その強さは建物の重さに比例します。
軽くて耐力にすぐれた木を構造体に使う木造住宅は、地震の際に大きな被害を受けることが少ないわけです。
日本のような世界有数の地震国では、これは大変に有利なことといえるでしょう。
木構造の評価
本来筋交いは、中央部で座屈破壊しやすいといわれるが、実際には節の部分で座屈破壊することが多い。筋交いは無節、LVL(※1)、そして、集成材が望ましい。
※LVL=単板積層材。単板(ベニヤ)を繊維方向にそろえて接着したもの。
指標 | 考え方 | 建築での考え方 |
---|---|---|
初期剛性に関する値 | 耐力壁の弾性限界値 例:バネを引張ってもとに戻る限界値 |
地震時に力を受けても元に戻る限界 |
最大耐力に関する値 | 最大強度に安全率をかけた値 | 建物の余力を残した上での限界を指した値 |
1/120(150)rad時に関する値 | 木造の仕上げなどの損傷限界値(これ以上変形すると損傷を起こす) | 地震時に建物の仕上げなどが損傷しない限界 |
靭性に関する値 | 耐力壁の粘り強さ、エネルギー吸収性能を表す指標 | 地震時に倒壊しない限界値(変形はする) |
木は軽いから地震に有利
合板の原料は現在、小径材も利用可能となった国産材針葉樹の合板への加工技術(間伐材等の細い原木でも処理できる加工機械の開発など)の向上や単価の安い原木の活用によって競争力が高まったことにより、国産針葉樹材の供給量は増加しています。
原料として国産材を使用する利点としては、原木長さが2mでよいため歩留まりが高いこと、厚木の反り・曲がりに対する許容範囲が広いことや、乾燥を単板加工後に行うため製品含水率の均一化が図りやすいこと、などが挙げられます。
樹種・属名 | 産地 | 気乾比重 | 曲げ強さ | ヤング率 | 耐朽性 |
---|---|---|---|---|---|
ヒノキ | 日本 | 0.44 | 750 | 90 | 大 |
ヒバ | 日本 | 0.45 | 750 | 90 | 大 |
スギ | 日本 | 0.38 | 650 | 75 | 中 |
カラマツ | 日本 | 0.50 | 800 | 100 | 中 |
ベイヒバ | 北米 | 0.51 | 705 | 80 | 大 |
ベイスギ | 北米 | 0.37 | 550 | 80 | 大 |
レッドウッド | 北米 | 0.46 | 600 | 90 | 大 |
ベイツガ | 北米 | 0.46 | 745 | 90 | 小 |
サザンパイン | 北米 | 0.58 | 90 | 120 | 小 |
イペ、ラバチョ | 中南米 | 1.10 | 1330~ | 160~ | 大 |
出典:(国産材)日本の木材、日本木材加工技術協会 (1996)・(輸入材)世界の有用木材33種、日本木材加工技術協会(1975)
木の知識、木材総合情報センター(1998)・D. A. Kribs :Commercial foreign wood on the American market(1959)
※ヤング率とは、ものを引っ張ったときの 伸びと力 の関係から求められる定数です。“曲げ剛性”“たわみ剛性”とも呼ばれます。
強度も科学してあります
集成材の信頼
集成材の信頼
1.東大寺(728年)の仏像、円柱に使われている
2.お膳/奈良時代より一般家庭でも使われた
近年
3.ヨーロッパの木橋(1367年)
4.アメリカで700人乗り最大の木製飛行機は戦中に制作ハワード・ヒューズ社に現存している
5.日本の木製飛行機/戦中に制作 三澤木材㈱でも制作
6.木構造用合板/アメリカは2×4建築に戦前より活用
最近
7.ミサワホーム接着工法45年、140万棟の実績
8.南極昭和基地合板で制作
9.皇居新宮殿、昭和35年に土壁のかわりに合板を使用
10.森林組合研究所所見/レゾルシノールは2000~3000年の耐久性
11.宮崎木材加工センター所見/集成材の耐久性は木材と同じ
最近の活躍
12.集成材の規格/JASが世界標準になりつつある
13.飛行機のアルミ構造体は、接着剤にて接合している
14.人間の手術の傷、糸を使わず接着剤で結ぐ